kiuri - スター・マルス・コーヒー、雑談 - スター・マルス・コーヒーのスタッフ

スター・マルス・コーヒー、雑談

スター・マルス・コーヒーのスタッフ

 

マンガ煩悩

古い会社では、朝の朝礼とかで、社訓を唱和したりしますが、そういう時には頭の中で、鬼束ちひろさんの「月光」のフレーズ「こんなもののために生まれたんじゃない」が自動再生され、私には他にやる事があるんじゃあないか、という煩悩のようなものが結晶化していたのです。

といって、絵やイラストやマンガだけで生活できるようなレベルの才能も無く、全力少年のようなエネルギーも無く、どうしたものかと毎晩、薄いコーヒーで煩悩を飲み込んでいました。

 

火星人の訪問

ある夜の事でした。ドアのチャイムが鳴ったので、宅配便かと思って開けると火星人が立っていました。

「俺、アマゾンから来たんじゃないっすよ、火星から来たっすよ。
なんか、俺の好きな煩悩の匂いがしたんで来たっす。
火星人なんだけど、なんか地球でデビューできないっすかね」

「そ、そうですね、適当なマンガを考えましょうか。
火星からやってきたロックバンドが大成功するとか、そうやつとか」

「ありがたいっす、俺、火星のコーヒー豆、こっそり持ってきたんで
お礼に、これでコーヒー淹れますよ」

「すごく美味しい!あなたならカフェを開けば、地球でもやっていけますよ」

そういう流れで、カフェを開店することになり、江ノ島の岩山に小さな敷地を用意しました。

私は店の設計とロゴのデザインを柳原設計事務所に頼みに行きました。

 

スター・マルス・コーヒーのロゴマーク

「ロゴマークは、これでどうですか」

「なんかねえ、俺ら火星人がクラゲっぽくないっすね。エイリアンの幼虫みたいっすね。
卵から飛び出して顔に貼りつくやつね、あれみたいっすよ」

 

スター・マルス・カフェの内装設計

「柳原先生、これ手抜きじゃないですか。全然おしゃれ感が無いですよ」

「そうだ、そうだ、俺らの火星でもこんなダサいカフェは無い。
カウンターテーブルの角が当たって痛いだろ」

「君たちは文句を言う立場には無いんだよ。敷地面積が四畳半で石灰岩の岩山に作るんだって?
しかも私に与えられた設計予算は5000円
設計したとしても、誰が工事するんだね?
とにかく、現地に行ってみよう」

 

現地調査

柳原先生は岩山を見ながら言いました。

「君たちはこの岩山にどうやってカフェを建てるんだね
資材や重機の用意にも相当な費用が必要だ。
君たちの総予算15000円じゃあ何もできんぞ
そもそも開店しても客が来るわけがない」

「俺らの火星では15000円あれば一生遊んで暮らせたのに、なんてこった。
でも、俺たちには、設計図もクレーンも要らないんだ。
柳原先生さえ居てくれればいいんだよ」

「ぐえーーーーー」

柳原先生の叫び声が夏空に響き渡りました。

 

 

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